1.商業登記の申請を怠った場合(申請懈怠)
商業登記は登記事項に変更が生じた日から原則として2週間以内に変更登記の申請をしなければなりません。
この期間内に登記の申請をしなかった場合(申請懈怠)、代表者個人が100万円以下の過料の制裁を受けることになります。
この過料の制裁は、登記の申請をしなかったことについて代表者に過失が無かった場合には課されることはありませんが、通常、過失が無かったことを立証することは困難なので、申請懈怠にならないように注意が必要です。
2.役員の選任自体を怠った場合(選任懈怠)
取締役が辞任したりして、法定の員数や定款上の員数を欠く事態になった場合は、速やかに新しい取締役等を選任して、当該員数を満たす必要があります。
しかし、この選任手続きを怠った場合にも、100万円以下の過料が科されます。
これが、選任懈怠です。
新しい取締役を選任したとしても、当該新取締役候補から就任の承諾を得られない場合も選任を懈怠として扱われます。
そこで、承諾を得られない場合は、別の者を選任し、承諾を得る必要があります。
3.役員の退任と申請懈怠・選任懈怠
取締役が辞任や任期満了のより退任した場合、後任者が選任されないと、当該退任した取締役が、後任者の就任まで引き続き、その任に当たることがあります。
この場合、後任者が就任しない限り、当該取締役の退任登記をすることができないので、退任登記の申請懈怠にはなりません。
しかし、法定又は定款上の欠員が生じていることに変わりはないので、後任者を速やかに選任しなければなりません。
前任取締役が任務にあたっているのだから、しばらく放置しておいてもいいだろうと考えるのは問題です。
この場合には選任懈怠の責任が生じるからです。
4.過料の通知の例
「過料」は行政罰であり、刑罰である「科料」とは異なるので、刑事事件ではなく非訟事件として処理されます。
地域により異なることもありますが、概ね次のような記載内容の通知が届きます。
登記の申請を怠ると余計なコストが生じてしまいますので、登記期間には十分に注意して対応してください。