「増員でオフィスが手狭になった」
「新規顧客開拓のため支店を作ろう」
「有能な社員にもっと権限を与えて意思決定の迅速化を図ろう」
このように、会社の本店を移転したり、支店を設けたり、法律上権限を拡大した社員を選任する場合に行うのが本店移転登記、支店設置登記、支配人選任登記です。
1.本店に関する商業登記
本店の所在場所は登記事項なので、本店を移転する場合は、本店の所在場所を変更する登記が必要となります。
また、定款には「本店の所在地」を定めることになっていることとの関係で、本店移転の登記を行うための手続きが異なります。
定款の「本店の所在地」は最小行政区画まで記載すれば足りるとされているので、通常は、いわゆる住所まで記載していることは少ないと思います。
つまり、大阪の会社を例にとると定款の「本店の所在地」は「大阪府大阪市」としている場合が多いということです。
東京との特別区に関しては「東京都新宿区」と「区」までを定めなければなりませんが、大阪市のような政令指定都市の場合は「区」まで定める必要はありません。
そこで、先の例でみると、本店の移転先が大阪市内であれば、定款の変更が必要ないので、取締役の過半数(取締役会設置会社であれば取締役会の決議)で移転先を決めればよいということになります。
これが堺市に移転するということであれば定款自体の変更が必要になるので、株主総会で移転先を決定する必要があります。
2.支店に関する商業登記
支店を設ける場合にも支店の登記が必要となります。
支店を設ける旨は定款に絶対に記載しなければならない事項ではないので、定款に特に支店の所在場所を定めていない場合は、取締役の過半数(取締役会設置会社であれば取締役会の決議)で支店を設ける場所を決めればよく、株主総会の開催は必要ありません
既にある支店を移転しようという場合や、廃止しようという場合にも支店の設置と同様に、取締役の過半数(取締役会設置会社であれば取締役会の決議)で決めればよいということになります。
3.支配人に関する商業登記
支配人は会社の本店又は支店の事業について他津的な権限を有する者として選任された使用人のことです。
会社法では、「支配人は会社に代わってその事業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と定められているので、選任された本店又は支店に関してという制限がつくにせよ、その権限は非常に広いと言えます。
そこで、意思決定の迅速化を図りたいという場合には、支配人を選任することも選択肢の一つとなります。
支配人の選任は取締役の過半数(取締役会設置会社であれば取締役会の決議)で決定します。